テレワークの浸透で注目されるレコグニションとは?人事として理解したいその意味や構築のポイントなど

 2021.11.24  AJS株式会社

「レコグニション」とは、従業員の働きや努力を賞賛するための仕組みを指します。インセンティブなどとは異なり、金銭的な報酬以外の方法を用いることが一般的です。本記事では、レコグニションという用語の意味をはじめ、レコグニションの具体例やメリットや導入方法などについて解説します。

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レコグニションの意味

「レコグニション(recognition)」とは、英語で「認識」や「承認」などを意味する言葉です。人事に関連するシーンでは、従業員一人ひとりの努力や実績を承認して賞賛する制度を指し、インセンティブと違い金銭的な報酬以外を用いるのが特徴です。多くの企業で採用されている社員表彰制度なども、レコグニションの一種といえます。

会社が承認や称賛を与えるのではなく、組織のメンバー同士が承認し合う場合は「ソーシャル・レコグニション」とも呼ばれます。大企業の場合、従業員が多すぎて「それぞれの名前と顔が一致しない」ということも少なくありません。そこで、互いの働きに対して日頃から感謝や称賛を伝えることで、モチベーションの向上と気軽なコミュニケーションが促され、組織の一体感を高められるのです。

特に昨今は、テレワークの浸透で仕事ぶりや仕事の過程・成果が周囲には見えづらく、社内のコミュニケーションも希薄化するため、より一層レコグニションが重要性を増しています。

レコグニションが注目を浴びている背景には、こうしたテレワークの浸透に加え、少子高齢化にともなう労働人口の減少により、大半の企業が慢性的な人手不足に悩まされていることも影響しています。ここ数年の採用市場では売手市場が続いており、知名度の低い中小企業にとって、優秀な人材を確保するのは困難な状況といえるでしょう。

また、年功序列制や終身雇用制の崩壊にともない、入社後ある程度の経験を積んだ段階で、さらなるステップアップを目指して転職するのも珍しいことではなくなっています。反対に、自分の働きが認められていないと感じている従業員も、やりがいやより活躍できる場を求めて離職してしまいます。

こうした理由から、企業が安定的な成長を目指すうえで、従業員のモチベーションやエンゲージメントを向上させる取り組みが不可欠になっているのです。

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レコグニションの例

前述通りレコグニションには、主に会社や上司が個々の従業員を評価して功績を称えるものと、従業員同士が称賛し合うソーシャル・レコグニションの2種類があります。

会社が従業員に与える一本通行的なレコグニションの例として、代表的なものが「表彰」です。年間を通じて優秀な成績を残した従業員に贈られる「業績表彰制度」や、長く勤めている従業員に労いと感謝を伝える「永年勤続表彰制度」といった表彰制度は、古くから多くの企業で採用されてきました。

一方のソーシャル・レコグニションの例としては、「ピアボーナス」や「ありがとうカード(サンクスカード)」などが一般的です。

ピアボーナスとは、「peer(仲間)」と「bonus(報酬)」を掛け合わせた造語で、従業員同士で少額のインセンティブを贈り合う制度のことです。ピアボーナスによる評価対象には、仕事の業績や成果ではなく、日々の助け合いや気配りなどが該当します。専用のツールを用いた導入が一般的で、スマートフォンやPCから気軽に報酬とコメントを送れるため、普段あまり交流のない他部署のメンバーともコミュニケーションを取りやすいというメリットがあります。
なお、報酬はポイントや社内コインでやり取りされ、受け取った分は「1ポイント=1円」といった具合に現金換算して給与に上乗せしたり、景品に交換したりと会社によって様々です。

ありがとうカードとはその名の通り、ほかの従業員に対して感謝の気持ちを伝えるために贈るカードです。従来では手書きのカードを手渡ししたり、掲示板に掲載したりする方法が主流でしたが、近年はアプリを活用し、スマホやPCでメッセージを送れるようにしている企業もあるようです。アプリを使えば、贈りたい相手を選択して、伝えたい内容を入力するだけで済むため、手書きしたりカードを集計したりする手間が省けて便利です。ただ、制度を導入しただけではほとんど活用されない場合もあるため、受け取ったカードの枚数に応じて給与に反映したり、ランキングを集計して発表したりする工夫も求められるでしょう。

レコグニションを採用するメリット

レコグニションを採用することで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。以下で詳しく解説します。

社員エンゲージメントの改善

働き方が多様化し、働く意味や仕事に何を求めるかといった価値観が変化している現代において、会社に対する従業員の帰属意識を高めるには、金銭的な報酬を用いるだけではもはや不十分です。

これまで、従業員のモチベーションアップやエンゲージメントの向上には、昇格や昇給で対応する考えが一般的でした。しかし、金銭的な報酬は、一時的に従業員の意欲を高めることはできても、永続的な効果にはなかなか結びつきません。

それに対し、上司や同僚などから努力や働きぶりを認めてもらうことは、従業員が自分の仕事に誇りややりがいを見出し、個々のやる気を引き出すことにつながります。また、部下や後輩から受ける感謝の言葉は、周りをリードしていく立場の従業員にとって、満足感をもたらします。さらに従業員同士の交流や連携が増えることで、職場全体が活気づき、組織の一体感を生み出すことにもつながるでしょう。

企業としての生産性・パフォーマンス向上

レコグニションは、企業全体の生産性やパフォーマンスの向上にも寄与します。社内でどんな立場にある人も、自分の取り組みを認めてくれたり、自分を必要としてくれたりする対象に対しては、全力でその気持ちに応えようとするものです。レコグニションによって一人ひとりのエンゲージメントが高まれば、従業員はこれまで以上に「チームや会社に貢献するため自分に何ができるのか」を意識して、仕事に取り組めるようになるでしょう。

また、自分の仕事だけでなく、同僚や他部署が取り組んでいることにも関心を持ち、自然と他者の功績を称える習慣が根づいていけば、会社全体のコミュニケーションが活性化されるとともに、ポジティブな雰囲気が広がっていきます。レコグニションを通じて、前向きな姿勢で仕事に邁進できるようになれば、困難な課題に対しても進んで挑戦できるようになるでしょう。結果として、個々のパフォーマンスが最大化されるだけでなく、組織全体における生産性の改善にもつながります。

離職の抑制

レコグニションの導入は、離職の抑制にも役立ちます。特に若い世代は、金銭的な報酬以上にやりがいに価値を置く傾向があり、自分の仕事が会社に認めてもらえていると感じられるかどうかは、働くうえで重要な意味を持ちます。とはいえ、上司から一方的に業績を評価されるよりも、身近な同僚同士が承認・称賛し合うほうが、会社への愛着を育むうえでは効果的です。

また、レコグニションであれば成果を数値化しにくい職種や、同僚へのサポートや後輩の指導といった、可視化が難しい努力に関しても正当に評価できます。メンバーが互いに認め合う企業風土を醸成できれば、従業員は日々の仕事にやりがいを見出せます。結果として会社へのエンゲージメントが高まれば、「長くこの会社で働きたい」と思わせることも可能でしょう。

レコグニションの構築におけるポイント

レコグニションを制度として構築する際は、事前にさまざまな取り決めが必要です。以下では、レコグニションの構築におけるポイントを解説します。

範囲の明確化

レコグニション制度の構築にあたっては、まず制度を適用する従業員の範囲を明確化することが大切です。契約社員や派遣社員のほか、パート・アルバイトといった非正規の従業員まで含めるかどうかを検討しましょう。

なお、基本的にレコグニションでは「従業員が満足感を得ながら働けるようにする」意図があるため、一部の従業員のみを対象とすると不公平感が生じ、かえってモチベーションやエンゲージメントの低下を招く恐れがあります。そのため、制度の対象範囲はできるだけ広く設けたほうが効果的です。現行制度の対象者に非正規社員を含めていない場合、レコグニションがもたらす効果をよく理解したうえで、対象範囲を見直すことも必要でしょう。

構成要素の検討

次に、レコグニションを構成する要素を具体化し、運用のルールを決めていきます。具体的には、「誰がレコグニションを与える/与えられるのか」「レコグニションを与える規準や場所、方法、タイミングはどうするか」などです。

従来のレコグニションは、表彰やありがとうカードなど選択肢が限られていました。現在は賞賛ツールなども登場してきているため、方法やタイミングを調整していけば、おのずとバリエーションも広がっていくはずです。構成要素が曖昧なまま運用を開始しても、制度の定着は見込めないため、ここをきちんと固めることが重要です。

フィードバックの重要視

せっかくポジティブなフィードバックを送るのであれば、早いに越したことはありません。フィードバックを後回しにすると、本人も自分の行いに対する印象が薄れ、何を評価してもらったのか思い出せないことがあります。それではレコグニションの効果が発揮されないため、フィードバックは迅速に行うよう意識しましょう。

社内の浸透

レコグニションの対象範囲や運用ルールが具体的に定まったら、従業員にその趣旨や目的、ルールを周知します。いきなり制度を導入したところで、従業員同士でお互いの取り組みを認め合う企業風土が醸成されていなければ、期待するほどの効果は得られないでしょう。したがって、制度の運用前に説明会などを設け、従業員全員にレコグニションの必要性を理解してもらう必要があります。運用ルールを周知する際は、文章化して社内規定に加えるのもひとつの手です。

振り返りの実施

レコグニションを継続的に機能させていくためには、導入後も定期的に制度設計や効果を検証する必要があります。効果検証を怠ると、本来の目的から外れた使い方がされていたり、いつの間にか制度が形骸化していたりするなどの事態が起こりかねません。よりよい制度にするためにも、活用頻度や効果、課題点についてアンケートを実施し、その都度制度に反映させましょう。

まとめ

働き方や仕事に対する価値観の多様化が進んだことで、従来のように金銭的な報酬を与えるだけでは、従業員のモチベーションやエンゲージメントを管理することが難しくなっています。仕事にやりがいを見出し、会社に愛着を持って長く働いてもらうためにも、今後はレコグニションの導入や現行制度の見直しを図る必要性が高まっていくでしょう。

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