企業の人事担当者であれば、「ハロー効果」という心理学用語をよく耳にするのではないでしょうか。
ハロー効果は人事評価の場面でよく生じます。そのため、適切な人事評価を行うにはハロー効果が人事評価に及ぼす影響を理解し、対策を講じる必要があるでしょう。
本記事ではハロー効果の意味や人事評価に与える影響、その対策について解説します。
ハロー効果とは
ハロー効果(以下:当該効果)とは、ある対象を評価する際、目立ちやすい面や優れている面、劣っている面などに引きずられ、他の特徴に関する評価も歪んでしまうことです。
心理学の世界では「認知バイアス」と呼ばれるものの1つで、従業員を評価する際にも知らず知らずのうちにバイアスが入っている可能性があります。
ハロー効果の種類と例
ハロー効果には大きく2つの種類があります。詳しく解説していきましょう。
ポジティブ・ハロー効果
「ポジティブ・ハロー効果」とは、人の良い面に引きずられ、他の点も実際より高く評価する現象を指します。
「元気良くあいさつできる」「身なりが清潔である」といったプラスな側面を見て、「仕事においても優秀だろう」「人付き合いの良い人だろう」などと好意的に判断することが主な例です。
また、知らないメーカーの商品やサービスに対し、自分の好きな女優が起用されたCMを見て安心感を抱き、「きっと良い商品・サービスに違いない」と購買行動に至ることがありますが、これも当該効果の一例といえます。
このように、主にプラスな側面からプラスの感情を抱いていく心理傾向がポジティブ・ハロー効果です。
ネガティブ・ハロー効果
「ネガティブ・ハロー効果」とは、反対に人の悪い面を見て、他の点も実際より低く評価する現象を指します。
「髪の毛がボサボサで清潔感がない」「あいさつも返事もまともにできない」といったマイナスな側面を見て、「おそらく仕事もできないだろう」「コミュニケーションを取るのが嫌いなのだろう」などと否定的に判断することが主な例です。
また、CMに出演しているタレントが不祥事や事件を起こして消費者に不快感を与え、CMで宣伝している商品やサービスの売り上げまでも落ちてしまうことがあります。こうした企業のイメージダウンも当該効果の1つです。
このように、主にマイナスな側面からマイナスの感情を抱いていく心理傾向がネガティブ・ハロー効果です。
ハロー効果が人事評価に与える影響
プラスな側面にもマイナスな側面にも作用するハロー効果は、人事面での評価にもさまざまな影響を及ぼします。そこで、従業員を評価する際に生じる影響を具体的に見ていきましょう。
1つ目に挙げられるのは、過去の経歴と評価を紐付けてしまうことです。出身大学や過去の業務上の実績などについて輝かしい経歴がある場合、現在の評価も高くなってしまうといったケースが考えられます。逆に経歴がパッとしない場合、評価が低くなってしまうこともあるでしょう。
過去の経歴はその人を評価する1つの要素ではあります。しかし、現在の業務の評価とイコールではありません。経歴と評価を繋げてしまうことは問題といえるでしょう。経歴やコミュニケーションスキル、その他のスキルなどはそれぞれ切り分けて評価することが重要です。
2つ目は保有スキルを拡大解釈してしまうパターンです。例えば、バイリンガルだという人物について、グローバルに活躍できる人材と安易に評価してしまうケースが考えられます。外国語が話せることと、グローバルに活躍できるかどうかは別問題です。保有スキルと業務遂行能力は切り分けるべきものといえるでしょう。
3つ目は、1つの側面をすべての側面に当てはめてしまうパターンです。例えば「学校中退」という側面をとって、継続することができない、仕事を最後まで完遂することができないなどと評価を下げてしまうようなケースです。通学における継続力を業務に対する継続力に当てはめて判断するのは早計でしょう。
このようにバイアスによって評価を変えてしまわないためには、1つ1つの評価基準を持って判断することが重要です。
人事評価におけるハロー効果への対策
「印象も含めて実力」という意見もあるでしょうが、従業員を評価する場合にはマイナスの影響が出る可能性もあります。その人の能力や成果によって判断しなければ、社内全体の士気低下にも繋がりかねません。
人事における適正な評価を行うには、一定の対策を要します。ポイントとしては主に以下の3つが考えられるでしょう。
- 評価基準の明確化
- 複数の評価項目を設ける
- 評価者の訓練を行う
それぞれ詳しく解説します。
評価基準の明確化
繰り返し述べるように、当該効果への対策として一番重要なのは評価基準を明確にすることです。基準が曖昧であれば、評価者によってバラつきが発生し、評価エラーも起きやすくなります。企業の目指すところや職場ごとの業務との整合性を考慮しつつ、評価項目や採用すべき基準を適切に判断することが肝要です。
従業員を評価するポイントは大きく分けて、次の3つから構成されています。
- 能力評価
- 情意評価と行動評価
- 成果評価
能力評価は、知識やスキル、企画力、コミュニケーション力、営業力など、個々人が備えている能力で評価する方法です。
情意評価は勤務態度や規律意識、倫理観などで、また行動評価は課題の発見や問題解決能力のほか、協調性や行動力などを測ります。
成果評価とは、仕事で上げた業績への評価です。
これら3つはいずれも重要であり、企業によって重視すべきポイントは違えど、成果に偏重しすぎても、情意に偏重しすぎても良くありません。総合的に見て判断することが重要といえるでしょう。
複数の評価項目を設ける
「評価基準の明確化」の項目でも触れたとおり、複数の評価項目を総合的に見て判断することは重要です。評価項目を多種多様なものにするほど、その人の評価における指標は多角化します。そうすることで結果的に評価の誤差や揺れなどを調整できるのです。
上記の能力評価や成果評価以外にも、企業独自で「提案」「顧客折衝」「クロージング」などの評価を追加すると良いでしょう。あらかじめ評価ポイントを細分化しておけば、ミスマッチを防げます。
評価者の訓練を行う
評価の基準を明確にしたとしても肝心の評価者の能力が伴わなければ、適切な評価を行うことは困難になります。適切な評価を行うには、評価基準や評価方法に関して評価者が正確に理解しておくことが重要です。
そこでポイントとなるのが評価者の訓練です。評価者同士がグループを組み、自社の評価基準について理解を深めながら評価エラーについて考察していきます。何度も訓練することで、評価に対するズレを最小限にすることが可能となります。
従業員に対する評価は、場合によっては従業員の人生にも関わる重要な業務です。適切に見極めなければ、従業員のモチベーション維持が困難になるほか、企業全体としての成長性の低下にも繋がりかねません。
AJSが提供する評価業務の効率化サービス
この様に、ハロー効果の対策を行うには、人事担当者の多くの時間と労力を割かねばなりません。そのため、改善を試みたくても普段の業務が圧迫し、なかなか改善に着手できていない人事担当者も多いのではないでしょうか。
私たちAJSは、こうした人事担当者様向けに、評価業務に係る業務工数を大幅に削減できるツール「P-TH」を開発しています。現在ご利用中のエクセル評価シートをそのままシステム化する事で、評価業務における入力、回収、集計、可視化の工数を徹底的に効率化する事が出来ます。
ハロー効果への対策など、貴重な時間を本当に割くべき事に集中していただく事で、貴社の人事評価体制は、より良いものになると確信致しております。
まとめ
ハロー効果はプラス面にもマイナス面にも印象を歪めるため、従業員を評価する場合に障害となる可能性があります。対策としては、ハロー効果の存在を認識したうえで、適切な評価を行うための評価基準を明確化し、評価項目を複数設け、評価者自体のスキルを向上させることがポイントです。人事担当者は普段の業務と並行しながら、少しずつ改善に取り組むべきでしょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
- カテゴリ:
- 人事評価
- キーワード:
- 人事評価