評価、面接、採用など、人事関連で触れることの多いビジネス用語のひとつに「コンピテンシー」があります。
今回は、コンピテンシーによる人事評価(人事考課)について、導入の流れやメリットなどをご紹介します。
コンピテンシー(competency)とは
そもそもの意味
能力や技量、手腕などと直訳されるコンピテンシーですが、ビジネス、特にマネジメント用語では、「高業績者(ハイパフォーマー)の行動特性」という意味で用いられます。
高い業績・成果を上げている社員は、必ずしも高学歴や高い専門知識の持ち主とは限りません。
では、他者と何が違うのか?高い業績・成果へ繋がる思考・行動パターンとは何か?
それが、人材マネジメントで求められるコンピテンシーだと言えます。
コンピテンシーが注目される背景
高度経済成長期の終焉により、人件費圧縮の必要に迫られた日本企業の多くが、年功序列の組織・賃金体制を見直し、成果主義の導入を進めました。
ですが、成果主義が陥りがちな業績重視の評価方法は、「目先の数字を追いかけ、顧客満足度を下げてしまう」、「その場限りの高業績者に不相応な高い処遇を与え、今後、高い業績を上げるだろう人材のモチベーションを下げてしまう」などの事態を発生させました。
そこで、成果だけでなく、成果につながる行動や能力、人物面などを評価する動きが盛んになり、その評価の基準としてコンピテンシーが注目されるようになったと考えられます。
また、急速な少子高齢化の中で事業競争に打ち勝つには、増員に頼る組織拡大から、1人ひとりの生産性を高める組織強化へとシフトする必要があったことも、コンピテンシーが注目された要因と言えます。
コンピテンシーによる人事評価のメリット・デメリット
自社の高業績者の行動特性を見出し、人事評価に活用するメリット・デメリットを見ていきます。
メリット
「業績・成果の向上とスピード化」「効率的な能力開発」「評価の納得度向上」などが主なメリットとして期待されます。
既に高い成果を上げている社員の行動特性を評価基準に取り入れるのですから、早期の業績向上や効率的な能力開発への期待は当然と言えるでしょう。
特に、知識や技術はあっても業績が上がっていなかった社員が、ハイパフォーマーに変化する可能性は高いはずです。
また、基準が曖昧になりやすい能力・プロセス評価が、コンピテンシーを基準におくことによって「何を努力すれば評価されるのか」が明確になるため、社員のモチベーションや理解・納得度も上がると考えられます。
ちなみに、コンピテンシーは採用基準や人材配置にも活用できるため、人事戦略としてのメリットが非常に高く、導入を急ぐ企業が増えているようです。
デメリット
コンピテンシーのデメリットは、導入までの「時間と手間」です。
コンピテンシーは具体的でなければ意味がないため、部門や職種、等級などで細かく確立する必要があり、時間と手間がかかります。
また、経済状況で需要が変化するように、コンピテンシーも変化するため、継続的なメンテナンスも欠かせません。
コンピテンシー導入のスキルやコストも考える必要があるでしょう。
コンピテンシー導入の手順
コンピテンシーの洗い出し
まずは、自社のコンピテンシーを見つけ出す必要があります。
高業績者から離れた位置の運用者がデータで見つけるのではなく、現場主義を基本とし、高業績者本人や上司へのヒアリング、場合によっては同僚や部下へのヒアリングなどの方法で、行動特性を洗い出します。
今後の事業展開や方向との整合性も大切です。
職種や階級などに応じたコンピテンシーモデルを作る方法が一般的で、細かい単位である方が、次段階の評価への落とし込みに適しています。
評価項目への落とし込み
次にコンピテンシーを評価項目へ落とし込みます。
各部門や職種によって成果が違うように、コンピテンシーも違いますから、画一的な落とし込みにならないよう、評価項目の表現には具体性が求められます。
評価項目・基準の曖昧さ回避も、コンピテンシー導入の大きな役割です。
目標設定
最後に目標設定を行います。
目標は、上司ではなく社員自らが考えることによって、目標達成への意識を高めます。
この辺りから、基本的に目標管理制度と同じと考えられますが、コンピテンシーによる評価項目や基準が、実際に成果・業績向上につながっているかを常に確認し、必要に応じたメンテナンスを続けることが重要です。
コンピテンシーは、自社特有のコツ・ノウハウのようなものです。
成果・業績につながるノウハウを共有し各々の目標にして実践することで、1人ひとりの生産性を高め、強い組織作りを行うことが、コンピテンシーによる人事評価制度の目的だと言えるでしょう。
- カテゴリ:
- 人事評価
- キーワード:
- 人事評価
この記事に関するサービスのご紹介