会社における人事評価制度はなぜ必要なのでしょうか。また、人事評価制度を最大限に活用して、社員の働く意欲を向上させるためにはどうしたらいいのでしょうか。自社の特徴やビジネス環境によって適した仕組みは異なります。本記事では、人事評価の目的や狙いを、活用事例にも触れながら解説します。
人事評価とは何か
人事評価とは、半期や四半期などの決められた期間で区切り、社員の仕事や業績の評価を行うことです。業種や職種、役職に応じて基準となる項目を作成し、それに沿って評価を実施します。単に評価するだけでなく、その評価を給与などの待遇に反映させるケースも多くなっています。
人事評価の目的・狙い
ではなぜ人事評価を行うのでしょうか。その目的や狙いについて5つの観点から解説します。自社の人事評価制度が、これらの観点で活用できているか振り返ってみてください。
社員に期待する行動・成果の伝達
評価を行うには、当然その基準となる項目を適正に設定する必要があります。また、単に項目を作るだけでなく、そのポイントを各従業員に対して事前に示すことが重要です。あらかじめ対象となる項目を明示することで、会社が何を従業員に期待しているかを明確にすることができます。また、従業員が自発的にその期待に応えようとする意欲を引き出すことも可能になります。
社員のモチベーション向上
社員がいくら努力しても、公正に評価されなければモチベーションを保つのは困難でしょう。給与などの待遇は人それぞれですが、まずは従業員の働きや成果に対して適切な評価を行うことがモチベーションを高めるうえで大切です。上司などが自分の頑張りを見てくれていると感じるだけでもモチベーションや生産性が向上する可能性もあります。また、可能な範囲で評価に応じて役職を与えたり給与をアップさせたりすることで、さらなるパフォーマンス向上につながります。
社員の能力やスキル向上の促進
評価対象の項目を明示する点ともつながりますが、会社が期待している成果などを浸透させることで、社員は成果の達成に必要な能力やスキルを向上させる努力を行いやすくなります。人事評価の実施を通して、社員の自発的な成長を促進できるのです。
会社による社員の理解
評価を行う前提として、評価者が被評価者をしっかりと理解することが必要です。それは、売上など表面的に見える部分だけでなく、考え方など内面にも着目することが重要です。社員への深い理解を通して、より適正な部署やポジションでパフォーマンスを発揮してもらうことも可能です。
会社による社員の処遇決定への活用
人事評価は、その実施だけでなく社員の処遇決定にも直結します。実際に待遇面に活用している会社も多いことでしょう。職種や役職によって重視するべき項目は異なりますが、昇給・賞与の有無やその金額を決定する材料としても人事評価は活用されます。
人事評価制度の事例
人事評価制度の事例を3つご紹介します。近年はビジネス環境の変化も激しく、最新の制度が貴社にマッチしない可能性もある点に留意しながら、参考になる点があれば自社で取り入れることができないか検討してみてください。
ディー・エヌ・エーの事例
IT企業のディー・エヌ・エーの事例です。ディー・エヌ・エーでは、マネージャーを多面的に評価するために「360度フィードバック」を行っています。従来の上長による一方的なフィードバックではなく、部下からも評価されることで、マネージャー教育を加速しています。この場合、匿名性の担保が一般的には重要視されますが、ディー・エヌ・エーでは「記名式」で行うのも特徴です。誰からのフィードバックかが分かることで、良い意味でダイレクトにメッセージが伝達され、改善につながりやすくなります。
メルカリの事例
IT企業のメルカリで行っているのが「ノーレイティング」の採用です。ランク付けと社員のパフォーマンスが結び付きづらいという考えに基づき、文字通り社員の能力や成果などでランク付けを行いません。「ランク付け」は基本的に「相対評価」を前提としていますが、ノーレイティングの導入により、社員一人ひとりのパフォーマンスが絶対評価されます。プロフェッショナルとしてパフォーマンスとバリューの体現を最大限に評価し、その向上に向けた努力をよりいっそう行ってもらえるように制度化しています。
ココナラの事例
スキルや知識のフリーマーケットサービスを展開するココナラの例です。より細かい等級制度が特徴で、11段階のグレードで評価します。一般的に等級は3から5段階程度に収まることが多いのですが、その粒度では同じ等級のなかでも能力や成果の差が大きくなってしまいます。それを解消し、各社員に適切な等級を与えることで成長を促しています。評価する基準は、「裁量」「コミット範囲」「育成責任」「業務レベル」「ノウハウレベル」の5つで、それぞれの等級で期待される水準が設定されています。
まとめ
人事評価は、社員の評価を行い査定するだけでなく、企業全体の成長や活性化のために活用できる制度といえます。一方で、活用目的を明確に理解し、実行に落とし込まないと、効果につなげるのは難しいものです。社員に期待する行動や成果の明示、社員のパフォーマンス向上につなげることなどを意識したうえで、人事評価制度の設計や見直しを行うとよいでしょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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