人事評価は、社員がパフォーマンスを十分に発揮し、会社を維持・発展させていく上で非常に重要な業務です。そのためには、評価者が正しく評価する必要があります。人事評価を適切に行うために必要な知識やスキル、またそれらを学ぶ研修の必要性についてご紹介します。
人事評価における評価者の重要性
人事評価にあたって、評価者の果たす役割は大変重要です。適切に行われるかどうかは、担当者次第と言っても過言ではありません。評価は個人的な推測や思いこみではなく、具体的な「事実」に基づいて行われるべきものです。そのため、評価者は自らの主観を排し、実際に部下がとった行動や言動、数字などで表される仕事の成果といった事実を正確に把握できる人でなければなりません。
また評価は、自分の主観ではなく、そうした事実を具体的かつ客観的な基準に照らし合わせることで決定されるべきものです。そのためそれらの基準に精通していること、それらを適切に活用できる人が求められます。場合によっては、自ら基準を作成しなければならないこともあるでしょう。こうしたことが当たり前にできる人でなければ、適切な評価を下すことはできません。
人事評価を行う上で重要な知識やスキル
このように人事評価において評価者は非常に重要な役割を担っているわけですが、実際に行っていく上では、次のような知識やスキルも求められます。
人事評価自体に関する知識
評価者は自社の評価基準や制度について正確に理解していなければなりません。特に評価者が複数いるような場合には、全員が同じ知識や情報を共有していなければ、人によって基準が異なるなど、とても公平とは言えないものになってしまいます。また評価者が一人だった場合でも、ハロー効果や拡大化、厳格化傾向に陥ったり、被評価者の事実や観察からくる評価ではなく周囲の憶測などを取り入れてしまうといった、様々な評価エラーが存在することも知っていなくてはいけません。
また、制度や基準の細部に関することだけでなく、そもそも人事評価というものそれ自体に関しても正しく理解していることが必要です。人事評価は、給与の査定や昇進・降格、異動といった目的のためだけに行うのではありません。定期的に行うことで社員のモチベーションを高め、人材育成や人材の有効活用に役立てるといった目的もあります。こうしたこともきちんと理解していなければ、うわべだけになり、社員のモチベーションはかえって下がってしまい、組織全体の活力も失われてしまいます。
観察・判断・フィードバックのスキル
評価者は、自らが下した評価を社員に伝える際も、ただ伝えればよいというものではありません。それが良い内容であれば「頑張っているな」というような一言があれば、さらにモチベーションが高まるということも考えられます。逆に低かった場合は、どこに問題があったのか、これからどのように改善していけばよいのか、といったアドバイスを上手に伝えることで、モチベーションの低下を防ぐことができるはずです。こうしたことを自然に行えることができれば、優れた評価者に近づくことができるでしょう。
人事評価の知識やスキルを高める研修について
評価の知識やスキルをさらに向上させようとすれば、学ぶ機会を作らなければいけません。一人で担当する場合は、関連書籍などを購入して勉強してもよいでしょうが、それがきちんと身に付いているかは、現場で実践しながら確認する必要があります。複数で行うときは、学習内容や習熟度がまちまちになるという新たな問題が生まれることもあります。
そこで有用なのが「研修」です。人事評価に関しても、様々な研修サービスが提供されています。こうした研修を受講すれば、経験豊富な講師から正しく、適切な知識やスキルを学び取ることができます。また、習熟度を客観的に確認することも可能です。複数で行う場合でも、評価の仕方や中身がバラバラになるようなことはなくなるでしょう。
研修を受ける方法
一般的に、こうした研修サービスを利用する企業が多く見られますが、既存のサービスは利用せず、自社で独自にカリキュラムを組んで行う企業もあります。ただし、評価者として十分なキャリアをもつ社員が指導するものでなければ中身のない研修になってしまうため、誰もができるわけではありません。
研修は会場で受講するばかりでなく、通信教育やオンラインで行われるものもあります。また講師を派遣してもらえるサービスもあります。内容や費用も様々な違いや特色があり、カスタマイズが可能なものもあります。よく比較して自社に合うものを選ぶとよいでしょう。
研修の期間
これも、各社によってパターンが違います。おおむね1日で終わる場合が多いようですが、午前中もしくは午後のみの半日や、2日間にわたる場合もあります。ただ一般的には、期間が短いものは一つのポイントに特化したものであったり内容が簡略化されていたりするため、留意が必要です。
研修の内容
研修の内容は様々です。研修形式としては、ケーススタディやグループワーク、ディスカッションなどが一般的です。研修で取り上げられるテーマとしては、主に次のようなものがあります。
評価制度について
人事評価という制度について、その目的や仕組み、重要性など基本的な知識を学びます。
評価エラーについて
「評価を行う際に起きやすい間違い(エラー)には、どういったものがあるか」ということや、「どうすれば、そうしたエラーを防ぐことができるか」を学びます。
フィードバックについて
下した評価を個々の社員にどのように伝えればよいか(フィードバック)、その手法やコツや、コミュニケーションスキルを学びます。実際にケーススタディによる演習を行い、実践に備えます。
面談について
評価を行うにあたり、その判断材料として直接社員と面談することもありますが、その際の進め方について学んだり、ロールプレイによる実習を行ったりします。
まとめ
人事評価は、誰もが簡単にできること、してよいものではありません。下された評価は、時としてその社員の人生を変えてしまう可能性もあります。評価者は十分な知識やスキルを持ち合わせているだけでなく、そうした重責を担う仕事だということを忘れることなく、常に誠実さをもって評価することが大切です。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。 米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー。
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