人事評価(考課)は、人の成長を会社としての成長につなげるために活用する「人財マネジメントツール」です。ですが、人が人を評価するということは、ルールがあっても難しいことであり、リスクも想定されます。 今回は、人事評価におけるリスクや、それを軽減するための対策についてご紹介します。
人事評価が正しく運用できなかったリスクとは
コミュニケーションの促進やモチベーションアップ、個々の能力の底上げなど、多くのメリットが考えられる人事評価ですが、反面、正しく運用できなかった場合のリスクも考えておく必要があります。
人事評価を正しく運用できないことのリスクをご紹介します。
社員のモチベーション低下
設定した目標を達成できなかった場合や、評価に対して納得できないと、社員のモチベーションダウンを招き、パフォーマンスが下がっていく恐れがあります。社員個々のパフォーマンスダウンは、会社全体のパフォーマンスと業績の低下を招きます。本来、モチベーションアップからさまざまな効果を期待できる人事評価ですが、運用次第では逆効果となる可能性もあるのです。
人材定着率の低下
社員のモチベーションダウンをフォローせずに放置すると、人事評価制度自体にネガティブなイメージを持ってしまう可能性があります。「自分は、この会社では評価されない」という結論に至れば、転職を考えるのは当然でしょう。人事評価制度へのネガティブなイメージは、離職につながる大きな要素です。
訴訟のリスクも
人事評価は人事処遇にも大きく反映されるため、正しい運用がされない場合、そのリスクは、社員個人のモチベーションダウンや離職だけでは済まないかもしれません。特に、マイナスの評価による降格や異動、処分等を受けた社員にとっては、生活を揺るがす事態となるため、最悪の場合訴訟に発展する可能性もあります。
さらに言えば、現代は個人が世界に情報を発信できる時代です。訴訟よりダメージの強いリスクも、非現実的ではありません。
リスクを軽減するためには
人事評価を正しく運用すれば、リスクが軽減されることは言うまでもありません。では、正しい運用とは具体的にどのようなものなのでしょう。
透明性、公平性を重視する
何を根拠としているかわからない不透明な評価、偏りが顕著で公平性が欠如している評価では、社員が評価結果に納得することは困難であり、モチベーションアップは期待できません。 「目標の達成度=会社への貢献度」となるよう、会社の経営方針・ビジョンから落とし込まれた目標を設定し、達成基準を明確にすることで、人事評価に対する透明度は向上します。
公平性については、評価エラーの知識習得や、評価者レベルを一定に近づけるための評価者研修の実施、評価される側も含めた、人事評価制度の目的を理解する場を設けることなどが有効です。
また、第三者の視点を取り入れることで、透明性・公平性をさらに向上させることが可能ですから、目標設定時点での人事部門等によるチェックも有益でしょう。
コミュニケーションを意識する
評価者研修を実施すれば当然入る項目ですが、上司(評価者)と部下(被評価者)の間に信頼関係がなければ、評価に対する信頼性も望めません。例えば、評価の低かった項目に対し課題意識を共有したくても、上司に対して「普段は何も言ってこないくせに」という不信感があれば、部下の気持ちに響くことはありません。目標設定や評価の際にだけコミュニケーションを取って場を和ませる上司では、その評価結果に対し、信頼を置くことはできないのです。
部下の行動や業務の進捗状況を把握し、相談を受け、アドバイスやフォローをすることは、人事評価制度の有無に関わらず管理職の職務であり、その中にはコミュニケーションの機会が多く含まれています。仕事を通したコミュニケーションこそが、信頼関係を築く大前提であることを意識する必要があります。
人事評価制度が人事処遇と正しく結びついていること
昇給・昇格・異動など、人事評価は人事処遇に反映されます。透明性・公平性が担保された正しい評価であれば、社員もそれについて異議を唱えることはないでしょう。ですが、高い評価結果であり、会社への貢献度も高いはずなのに、それに応じた報酬が得られなければ、リスクを回避することはできません。人事評価が正しく運用されるだけでなく、評価と処遇の結びつきにも、しっかりとした基準が必要です。
運用方法によっては想定以上の効果を生み出し、間違った方法を辿れば逆効果のリスクを持つ人事評価。「人」という生きた資源を動かすことの難しさをダイレクトに感じる業務ですが、それこそが管理職の醍醐味とも言えるでしょう。
- カテゴリ:
- 人事評価
- キーワード:
- 人事評価
この記事に関するサービスのご紹介