人事評価(人事考課)サイクルの中でも、重要度が高いとされるフィードバック面談ですが、現実には「結果と処遇を伝える場」にとどまっているケースがあり、面談自体を実施していない企業も存在するようです。 今回は、フィードバック面談の重要性や、効果的に実施するポイントをご紹介します。
人事評価におけるフィードバックの重要性
フィードバック面談には、以下のようなミッションがあります。
評価結果の共有
部下(被評価者)に評価結果を伝え、高い評価となった事例や、自己評価とのギャップについての根拠を示し、評価結果の理解・納得度を高める。
課題の認識と解決策の共有
評価結果から見えてきた課題を明確にし、課題をクリアするための具体的なアクションを自発的に考えさせる。
動機づけをする
前向きなアドバイスや激励によって、部下のモチベーションを上げる。 中長期のキャリア目標にも触れ、モチベーションの喚起・向上をはかる。
フィードバック面談の目的が、「評価結果と人事処遇の伝達」であれば、評価結果と通知書類を渡せば済むことであり、上司(評価者)が時間をとる必要はないでしょう。
ですが、フィードバック面談には上述のミッションがあります。
つまり、現状と今後の課題を共有し、いかに課題をクリアするか考えさせ、モチベーションを上げるという、育成目的があるのです。
部下の行動や思考を日常的に把握している上司だからこそ、遂行できる評価工程と言えるでしょう。
フィードバック面談への準備
効果的なフィードバックを限られた時間で実施するには、事前の準備が欠かせません。
評価結果を聞く・伝える準備
評価結果の伝え方の整理はもちろん、部下の自己評価や、評価結果についての質問を想定し、適切な回答やアドバイスができるよう考えます。
特に、自己評価とのギャップが激しい評価結果については、部下が理解・納得できるよう、その根拠を簡潔に説明できるよう用意します。
言葉の選び方ひとつで、部下のモチベーションが左右される場合もありますから、厳しい口調になりがちな方は、準備の時点で意識しておくべきです。
回答を引き出す準備
部下が業績を伸ばすために、また、能力とモチベーション向上のためには何が必要なのか、部下が自分で答えを出せるための材料を用意します。
部下が今までに、どんな努力で業績を上げてきたか、協力体制のとれる部署はないかなどを調べておくと、さりげない導きに役立ちます。
面談時間・場所の確保
フィードバック期間は、どの評価者も時間と場所を必要とし、会議室の予約が困難となるケースがあります。 極端な時間帯の面談設定は、「自分の面談は軽く見られている」という印象を残す可能性があります。 面談後にスケジュールを詰めている場合も、無意識に時計を見るなど、同様の悪印象を与えてしまうかもしれません。
フィードバックの効果を下げないためには、早期スケジューリングも大切なポイントです。
「人事評価の手順・流れと各フローにおけるポイント」もご参考にしてください。
フィードバック面談の流れ
部下を成長させるフィードバックには、面談の運び方も重要です。
1.場を温める
いきなり本題に入るのではなく、ちょっとした世間話などから入り、緊張感を和らげます。
2.自己評価の報告
部下の自己評価の報告を受けます。 書類を見て黙々と聞くのではなく、相槌を打つなどして、話しやすい雰囲気を心掛けます。 途中で口を挟みたくなる報告には、メモをとるなどして対処し、報告を遮らないようにします。
3.評価結果の報告
最終的な人事評価結果を伝えます。
まず褒めるべき点から伝え、部下が結果を受け入れやすい場を作ります。 次は、自己評価と一致しているマイナス評価について伝えますが、すでに問題点が判明していることが多いですから、この時点で時間をとる必要はないでしょう。 最後が、自己評価とギャップのあるマイナス評価の報告です。 何がマイナスに傾いた要因か理解・納得できるよう、その根拠を具体的事実・事例によって説明します。
部下から質問された場合も同様に、具体的事実・事例を用いて回答します。
マイナス評価だからといって、口調が突然変わることがないよう、意識しましょう。
4.課題の共有 課題解決に向けた打ち合わせ
評価結果から浮かび上がった今後の課題を明らかにし、課題をクリアするために何が必要か、どんな目標が適しているかを共に考えます。
ここで重要なのは、部下の自発的な課題の明確化と行動目標です。 上司には、多くを語るのではなく、部下がどのような成長を望んでいるのか理解し、自社の方向性との調整や、気づきを与えるアドバイスが求められます。
5.まとめ
面談結果を、上司・部下共にまとめて、終了となります。 評価結果と次回目標への合意が終了の条件ですが、大切なのは育成効果を高めることですから、今後の期待を表明するなどモチベーションを上げる締めくくりを意識します。
フィードバック面談の注意点
高圧的な姿勢
フィードバック面談は、課題解決の道筋を共に考える場であり、上司と部下の信頼関係がうかがえる場でもあります。 当たり前のことですが、高圧的な姿勢で面談に臨むことは、評価者失格です。 準備を怠るほどこの傾向に陥りがちですから、十分な注意と準備が必要です。
フィードバック面談は、準備や運び方、日頃の観察などの細かい注意点もあり、高いスキルが求められる評価工程です。
企業は定期的な評価者研修などを行い、常に効果の高い人事評価サイクルを維持できるよう、努力する必要があるでしょう。
<< コラム監修 >>
株式会社サクセスボード 萱野 聡
日本通運株式会社、SAPジャパンで採用・教育を中心とした人事業務全般に幅広く従事。人事コンサルタントとして独立後、採用コンサルタント、研修講師、キャリア・アドバイザーとして活躍中。米国CCE Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー、産業カウンセラー
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